Proton Mail for BusinessとFastmail Businessは、どちらも独自ドメイン(会社のドメインを使ったメールアドレス)を運用できる法人向けサービスです。ただし、プライバシーを重視するProtonの仕組みと、標準的なメールアプリからの利用を前提にしやすいFastmailでは、導入後の使い方がかなり変わります。
暗号化やデータの保管方針を重視するならProton Mail for Business、OutlookやiPhone Mail、Thunderbirdなどの外部メールアプリを組み込みやすくしたいならFastmail Businessが有力です。まず接続方式を決め、そのうえで容量や契約期間を比べると選びやすくなります。
Proton Mail for Business
こんな人に
プライバシーを優先し、Bridge経由のアプリ接続を受け入れられる
Fastmail Business
こんな人に
外部メールアプリとの接続や、利用者ごとのプラン選択を重視する
| 比較点 | Proton Mail for Business | Fastmail Business |
|---|---|---|
| サービスの中心 | プライバシー重視の独自ドメインメール | 独自ドメインメール、カレンダー、連絡先 |
| 外部メールアプリ | 有料プランでProton Mail Bridgeを介してIMAP・SMTPに接続。POP3は非対応 | StandardとProfessionalで外部アプリを利用可。IMAP・POP・SMTPのログインを明記 |
| 容量 | Mail Essentialsは1人15 GB | Basicは1人5 GB、Standardは50 GB、Professionalは100 GBのメール等用容量 |
| 認証・保護 | 管理者が2要素認証を全員または管理者に強制可 | 2要素認証、スパム・フィッシング対策を提供 |
| 契約の考え方 | 利用者単位・月単位で拡張。長期契約は不要と案内 | Basic・Standard・Professionalを利用者ごとに混在可。12・24・36カ月契約 |
表の容量は、同じ名前の指標に見えても指す範囲が違います。ProtonのWorkspace StandardとPremiumが案内する1 TB、3 TBは複合サービス全体の容量で、メールボックス専用とは限りません。Fastmailもメール等の容量とファイル容量を分けています。
Proton Mail for Businessは、暗号化やプライバシーを重視する組織向けの候補です。メールデータは暗号化された状態で、スイス、ドイツ、ノルウェーのProtonまたは子会社が運用するサーバーに保管され、オフラインバックアップも暗号化されます。一方で、端から端までの暗号化が適用される範囲、外部宛先との通信、アカウント復旧の条件については、自社の運用に合うかを確認しておく必要があります。
外部アプリを使う場合、Protonは有料プランでProton Mail Bridgeという仕組みを介してIMAP・SMTPに接続します。IMAPはメールをサーバーと同期する仕組み、SMTPは送信に使う仕組みです。POP3には対応していません。今の社内環境がPOP受信を前提にしているなら、運用の変更が必要になります。
Fastmail Businessは、StandardとProfessionalでOutlook、iPhone Mail、Thunderbirdなどの外部メールアプリを利用できます。IMAP・POP・SMTPのログインが明記されているため、既存アプリを使い続けたい場合は接続条件を比べやすい選択肢です。Basicを候補にするなら、必要なアプリ接続が含まれるかをプラン表で確認しましょう。
どちらのサービスも、独自ドメインを追加してDNS(ドメインの設定情報)を設定し、メールを受け取る仕組みです。導入前には、「実際にログインする利用者」と「利用者が使う別名アドレス」を分けて数えることが大切です。たとえば1人が個人名のアドレスと問い合わせ用アドレスを使っていても、必ずしも2人分のメールボックスが必要とは限りません。
ProtonのMail Essentialsは、1人あたり10アドレス、3つの独自ドメインを案内しています。管理者はユーザー、管理権限、容量配分、アドレス、そしてすべての未登録アドレス宛のメールを受けるキャッチオールを管理できます。個々の非公開ユーザーのメールへのアクセス境界は保持されます。
Fastmailは、Businessアカウント全体で600に、1人あたり15を加えた数を別名アドレスの上限として案内しています。共有アドレスも用意され、管理者は利用者の追加や、利用者ごとの容量・プライバシー・セキュリティを管理できます。部署アドレスを多く作る予定なら、利用者数と別名アドレス数を分けて見積もると、過不足を避けられます。
Protonでは、管理者が2要素認証の導入状況を確認し、管理者だけ、または全メンバーに強制できます。組織共通のスパム、ブロック、許可リストも管理できます。全員に同じ認証ルールを適用したい組織にとっては、分かりやすい判断材料です。
Fastmailは、2要素認証、スパム・フィッシング対策、複数データセンターへのバックアップを案内しています。主なデータの保管地域はEUまたは米国から選べます。ただし、これをすべての複製データやバックアップの所在地と同じだとはみなさないでください。保管地域が社内要件に関わる場合は、契約前に対象範囲を確認する必要があります。
ProtonのMail Essentialsは1人15 GBです。上位のWorkspace Standardは1人1 TB、Workspace Premiumは3 TBを案内していますが、これらはスイート全体の容量です。メールだけを比較したいなら、数字の大きさで決めず、メールボックスに使える範囲を確認しましょう。添付ファイルなどを含むメッセージは、受信50 MB、送信25 MBまでと案内されています。
Fastmailのメール、カレンダー、連絡先用の容量は、Basicが1人5 GB、Standardが50 GB、Professionalが100 GBです。これとは別にファイル容量が1 GB、10 GB、50 GBと設けられているため、合算せずに比べます。送受信メッセージは70 MB未満で、データ変換による増加を考えると、添付ファイルは通常50 MB以下が目安です。
ProtonのEasy Switchは、Gmail、Outlook、Yahoo、またはIMAP対応サービスからメールを取り込めます。対応する移行元では、連絡先とカレンダーも扱えます。法人向けには優先カスタマーサポートと移行支援が案内されていますが、応答時間の保証までは含みません。
Fastmailの移行ツールは、IMAP、CardDAV、CalDAVで通常どおりログインできる移行元から、メール、連絡先、カレンダーの予定を複製できます。Outlook.comからはメールのみです。24時間対応のサポートが案内されていますが、こちらも応答時間の保証とは分けて考えましょう。
どちらを選ぶにしても、移行元の種類だけでなく、メール、連絡先、カレンダーのどこまでを移すのかを先に決めておくと、不足に気付きやすくなります。
Protonの法人向けプランは利用者単位、月単位で拡張でき、長期契約は不要と案内されています。これに対しFastmailは、Basic、Standard、Professionalの3プランを利用者ごとに混在でき、12・24・36カ月から契約期間を選びます。部門ごとに容量や外部アプリの必要性が違う場合は、Fastmailの混在プランが費用設計に影響します。一方、長期契約を避けたい場合は、Protonの契約構造のほうが合わせやすいでしょう。
注意
2026年8月7日時点で、ProtonはGLOBAL向け情報、Fastmailは米国向け情報で確認しています。動的に表示される金額は本文で直接比較していません。Fastmailの表示額は税別です。契約前に、対象市場、通貨、請求周期、税込みの支払額を各サービスの申し込み画面で確認してください。
どちらも、社員が通常の業務メールを送受信するためのサービスです。Protonの有料アカウントは評判などによって送信上限が変わり、1メッセージの宛先は最大100件です。Fastmailにもプランごとの送受信数とデータ量の上限があります。ニュースレターや大量配信の用途とは分けて選んでください。
Q.既存のメールアプリをそのまま使える?
A.Protonは有料プランでProton Mail Bridgeを介してIMAP・SMTPのアプリを利用できますが、POP3には対応していません。FastmailはStandardとProfessionalで外部メールアプリを利用できます。アプリ名だけでなく、今使っている受信・送信方式まで確認してください。
Q.独自ドメインの設定だけで移行は完了する?
A.いいえ。新しいサービスで受信するためのDNS設定に加えて、過去のメールや連絡先、カレンダーをどこまで取り込むかを決める必要があります。移行元によって取り込める範囲が異なるため、小規模な試験移行から始めると確認しやすくなります。
プライバシーと、組織全体での2要素認証の強制を重視するなら、Proton Mail for Businessが合わせやすい候補です。一方、既存の外部メールアプリを生かし、利用者ごとに容量や契約プランを分けたいなら、Fastmail Businessが候補になります。
最後は名称や容量の数字だけで決めず、「どのアプリで受信するか」「利用者とアドレスをいくつ作るか」「どのデータを移すか」の3点を、自社の条件に当てはめて判断しましょう。
確認日: 2026-08-07(記載の各公式ページで確認。価格などは変わることがあります)
Fastmail Business
Proton Mail for Business